単純機械の概念自体が古代ギリシャに由来しているので、日本語で表現すると違和感を覚えるものが少なくない。ねじもその一つで、日本語でねじと言った場合にはボルトや木ねじなど、部品を留めつけるねじを思い浮かべてしまう。しかし、ヘロンが思い描いていたねじは
アルキメデスが発明したとされる
螺旋ポンプの様なものであると考えられている。螺旋ポンプは構造が単純であるのに、極めて効率が良く故障もしづらい。発明から2千年以上経った現在でも、ほとんど改良されること無くそのままの形で利用されている。螺旋ポンプは古代社会においては画期的な技術で、ヘロンはこれを念頭にねじを単純機械に加えたと言われている。
日本語の概念では斜面を機械と呼ぶには違和感があるが、英語の
machineの語源ともなっているギリシャ語のメカネ(スペル不明)には「物を動かす道具」というニュアンスがある。現在のような
クレーンが存在しない古代の土木工事では、高所に重量物を運ぶためにまず土を運んで斜面を作り、コロや滑車、てこなどを利用して荷物を持ち上げた。斜面を利用することによって垂直に引き上げるのに比べて、はるかに小さな力で荷物を運ぶことが可能となるので、古代の土木工事においては極めて重要な技法であった。斜面の利用によって、物体を小さな力で高所に移動できることから、これを道具と捉えて単純機械の一つとして数えている。
なお、斜面は物理学の発展に大きな寄与をしており、このことが単純機械の一つに斜面を加える大きな要因となっている。
ガリレオ・ガリレイはピサの斜塔から玉を落下させる実験を行ったとの逸話が残っているが、実際には大きな斜面を実験室内に作り、この上から玉を転がすことで重力や運動力学の実験を行っていた。現在のような高速度カメラ等が無い古代に、自由落下を目視で観測することは物理的に不可能であった。斜面を使って物体の落下速度を遅くし、観測結果を斜面の角度を考慮して数学的に処理して、自由落下の法則を研究したと言われている。