赤米 wikipedia|無料辞書
赤米(
あかごめ、
あかまい)とは、
古代米の一種で、
イネの
栽培品種のうち主に種皮部分に
タンニン系の赤色色素を含む品種を指す。日本では古来から栽培されていたが、品質面で
白米に劣る品種と考えられ、昭和末までにほとんど作られなくなった。しかし、近年
健康ブームの高まりとともに各地で作付面積が増加している。中国では「紅米」と呼ばれる。
◆性質
赤米品種は全国的に残存しており、その形質もさまざまであるが、一般的には吸肥力が強く、病害虫や気候の変化などの環境変化に強い。また、
寒冷地や低湿地でもよく育つと言われる。一方で晩生性がある、丈が高く倒伏しやすい(品種改良により克服した品種もある)、穂数が少ないため収量が得られないといった欠点もある。また、
インディカ種の赤米は脱粒しやすく越冬性も強いため、他の圃場に混入することがしばしばある。
赤米の赤色は種皮に含まれる
タンニン(ポリフェノールの一種)系の色素のためである。赤米の色素成分は米の表層にある糠層にあるため、精白度を上げると色が落ち、完全に精米すると白色になる。そのため、玄米のまま、あるいは軽く精白して食すのが一般的である。また
芒も赤色で、出穂の様は「田んぼが火事になったようだ」と言われることもあるが、高温の環境で栽培すると着色しない。赤米の赤色は貯蔵中であってもタンニンがポリフェノールオキシターゼなどの作用によって酸化重合することが原因で濃さを増していく。
赤米は単独で飯にした場合著しく食味が劣り、文献上でも、「殆んど下咽に堪へず。蓋し稲米の最悪の者なり」などと記述されているほどであるため、
[『日本往還日記』。一方少数意見であるが、貝原益軒は「味最も好し」と賞賛している(『大和本草』)]雑穀米として
白米や他の
雑穀と共に飯にしたり、酒・菓子の加工用に用いられることがほとんどである。食味のまずさの原因は赤米の色素であるタンニンの渋みや、
アミロース・
タンパク質の含量が高いことから炊飯した際に硬くて粘りがないこと、さらに前述のように精白度を上げると赤色が落ちてしまうため精白度を上げられないことに求められる。ベニロマンなど濃い色の芒をもつ品種は、
生け花や
ドライフラワー用にも販売されている。
◇品種
日本における赤米の代表的品種を挙げる。
・在来品種
・総社赤米(
総社市の国司神社の
神饌米として栽培されていたもの)
・対馬赤米(
対馬市の多久頭魂神社の神饌米として栽培されていたもの)
・種子島赤米(
南種子町の宝満神社の神饌米として栽培されていたもの)
・育成品種
・ベニロマン(対馬赤米と南海97号から作り出された改良品種。九州で栽培。)
・つくし赤もち(対馬赤米をもとに作り出された改良品種。九州で栽培。)
・紅更紗・紅香(トウコンベースの改良品種。北陸で栽培。)
・紅衣(赤室ベースの改良品種。東北で栽培。)
◆歴史
日本の赤米に関する最古の記録は、
飛鳥京跡苑地遺構から出土した木簡にある赤米の納品の記述である。その他にも
藤原京、
平城京からの木簡にも赤米に関する記述がある。また、
正倉院文書の『大倭国正税帳』『尾張国正税帳』にも地方から赤米が納められた記述がある。
また、中世には赤米種を主とする
占城稲が流入し、「大唐米」「太米」「唐法師」などという名で栽培された記録が残っている(中世に伝来した占城稲をインド型赤米、それ以前のものを日本型赤米と分類することもある)。江戸時代には農書を初めとして赤米の栽培や流通に関する多くの記録が残っている。厳しい気候条件に強く、排水不良の土地でも良く育つことから、低湿地や高冷地で盛んに栽培され、新田開発にも重宝されていたと考えられる。近年の例だと、明治期に
石狩平野の
泥炭地を開発する際に青森から赤米品種の「赤室」が持ち込まれている。しかし赤米は基本的に下等米として記述されており、下級階層の人々の食べるものとみなされていた。
明治以後、赤米は圃場の米の等級を下げる下等米として全国的に撲滅が行われ、昭和末までには通常の水田で赤米が栽培されることはほぼなくなった。しかし、戦後においても赤米が圃場に混入する事例が時折みられており、特に1960年代以降長野県で繁殖を続けている「トウコン」は駆除活動が続けられているが、いまだ根絶に至っていない。
一方で平成に入ると多様な形質の米に関する消費者の興味が高まり、1989年以降進められた農林水産省によるプロジェクト研究「スーパーライス計画」により赤米も品種改良が進んだ。赤米や
黒米に「
古代米」という名称を冠して「古代人が食べていた栄養豊富な米」という宣伝がなされるに至り、赤米は俄然注目を浴び、現在では各地で栽培が行われるようになり作付面積は年々増加している。「古代ロマン」と結び付けられて宣伝される例が少なくなく、
吉野ヶ里町、旧
須佐町のように遺跡や神話と結び付けて栽培している町のほか、旧
弥栄町のように赤米に関する文献が残っていたことを売り文句に栽培している町、また
南種子町のように赤米の栽培が残存していたことを売り文句として「たねがしま赤米館」なる施設まで作って宣伝している町もある。
◇古代の赤米
赤米は
飛鳥時代の存在が確認されているものの、伝来の時期は確かでない。稲作の伝来時に白米と共に伝わったと考える学者も多いが、具体的な証拠のない憶測の段階に過ぎない。まして赤米が野生種に近いことのみをもって、日本に伝来した最初の米が赤米だったと決め付けるのは、まったく根拠がない。「弥生人は白米でなく赤米を食べていた」「
卑弥呼も赤米を食べていた」などという宣伝文句は正確なものではない。
「古代、赤米は献上品として珍重されていた」というのは
木簡資料の曲解である。確かに木簡には地方から赤米が納められた記録があるが、全体から見れば白米の納入に関する記録のほうがはるかに多い。赤米が白米に比べて特別な献上品とされていたことを示す証拠はない。同じように赤米が神饌米として残ることのみをもって「赤米は神に捧げる米として神聖視されていた」というのも、全国各地の神社で栽培されていた神饌米のほとんどが白米であることを何も説明できない。
「赤米が
赤飯の起源である」というのは、
柳田國男が提唱して以来多くの注目を集めているが、現在のところ明確な証拠はない。柳田自身も赤飯と赤米飯の色が似ていることからの連想に過ぎないと説明している。
◆ 神事における赤米
前述のように、明治以降赤米は全国的な撲滅の対象となった。そうした状況の中、3つの神社で神事用に赤米が栽培され続けた。
岡山県総社市の国司神社、
長崎県対馬市の多久頭魂神社、
鹿児島県種子島の宝満神社である。
;国司神社
総社市新本には2箇所に国司神社(新庄国司神社・本庄国司神社)があり、それぞれが赤米を栽培している。栽培された赤米(神饌米)は岡山県の
重要無形文化財に指定されている。
;多久頭魂神社
多久頭魂神社では、寺田と呼ばれる水田で赤米が栽培され、神事に用いられている。赤米にまつわる神事は1年間で13にも及ぶ。
;宝満神社
宝満神社では、御畔と呼ばれる水田で赤米が栽培され、神事に用いられている。その歴史は2000年に及ぶともされている。宝満神社で栽培されている赤米は芒が白いという特徴を持つ。
◆赤米と健康
・赤米 page1
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